PET(ペット関節ケア)

犬・猫の健康な関節

犬や猫の関節の構造は、基本的に人間と同じです。異なるのは「壊しやすい関節」や「かかりやすい関節疾患」です。そしてそれは、犬や猫の種類によっても異なります。あなたの大切なペットの関節リスクを知り「健康な関節」を守ってあげましょう。

犬・猫の健康な関節

あなたと遊ぶ犬や猫を想像してみてください。どんな姿が思い浮かびますか?
大好きなフリスビーをくわえて駆け寄ってくる姿でしょうか。それとも、夢中になってリボンにじゃれつく姿でしょうか。そんな犬や猫の体にも、私たち人間と同じように、たくさんの関節があります。健康な関節があるからこそ、自由に走り回り、飛び跳ねることができるのです。

犬や猫の関節も、加齢や病気によって衰え、放っておくと歩けなくなることもあります。
ペットは大切な家族です。ともに長く元気でいられるように、飼い主であるあなたが、ペットの健康を守ってあげてください。

基本的な構造は私たち人間と同じです

犬や猫も私たち人間と同じ脊椎動物で、哺乳類に属します。そのため、関節の構造も基本的には人間と一緒です。それぞれの骨の骨端には「軟骨」があり、軟骨と軟骨の間は、滑膜(※)によって生み出される「関節液」で満たされています。

ただし、人間と犬や猫では、関節の数に違いがあります。そもそも関節とは、2つの骨と骨がつなぎ合っている部分です。その数は、基本的に全身の骨の数によって変わります。そして、人間と犬と猫では、その骨の数が違うため、関節の数も異なるのです。

驚くことに、人間と犬と猫で体内にある骨の数が最も多いのは犬です。犬の種類によっても違いますが、成犬の体には約320個の骨があるといわれています。猫も種類で若干の差はありますが、約240個の骨を持っています。そして、この中では私たち人間が一番少なく、約200個です。体の大きさからいえば人間が一番多いようにも思えますが、この差を生んでいる最大の理由は、しっぽの骨の数です。

私たち人間にはしっぽがなく、しっぽの名残として数個の尾骨があるだけです。これに対し犬には18〜20個の尾椎(しっぽの骨)が、猫には4〜26個の尾椎があります。ほかにも胸椎や腰椎の数も、人間より犬や猫の方が多いという特徴があります。
※関節を包む「関節包」という皮膜の内面を覆っている膜。関節を支え、関節液を生み出す機能を持っています。

負担のかかりやすい関節に違いがあります

また、人間と犬や猫では負担のかかりやすい関節に違いがあります。移動するためには歩行しないといけませんから、足の関節に負担がかかりやすいのは共通です。しかし、私たち人間と犬や猫とは歩行方法が全く違うので関節に対する負担のかかり方が変わってきます。

まず、二足歩行である人間の場合は、とくに膝関節に負担がかかりやすいという特徴があります。これに対し四足歩行である犬や猫は、前足の肘関節と手根関節(手首)に大きな負担がかかります。後足では、足根関節(足首)に最も大きな負担がかかるとされていますが、人間と同じように膝関節にも負担がかかります。

健康な関節には、健康な軟骨が不可欠です

一方、関節の構造自体は同じであるため、私たちにとっての「健康な関節」と犬や猫にとっての「健康な関節」に大きな差はありません。「健康な関節」とは「可動域が広く、スムーズに動く関節」です。そのような動きを維持するためには、クッションの役割を果たす関節軟骨と、潤滑油である関節液を生み出す滑膜が、正しく機能することが必要です。

しかし、人間同様に、犬や猫の関節も加齢に伴い衰えていきます。その中でも、関節機能にとくに大きな影響を与えるのが、関節軟骨の磨耗や劣化です。

関節軟骨は、骨の関節面を覆う、弾力性に富んだ強い器官です。その弾力によって、骨同士が直接ぶつかり合わないようにし、骨にかかる体重や衝撃を吸収しています。そのため、加齢や激しい運動により関節軟骨がすり減ったり変形したりすると、スムーズな関節の動きは損なわれてしまいますし、関節に炎症や痛みが出てきます。
そしてその痛みや炎症によって、関節の可動域を狭くしてしまうことにもなります。「健康な関節」を維持するには、関節軟骨のすり減りや破壊を抑え、修復・再生する機能を高めることが大切です。

UC-Ⅱ®は、こうした関節軟骨の改善に有効な成分です。「経口免疫寛容」という独自作用を持つUC-Ⅱ®は、その作用の過程で、傷んだ関節内に抗炎症性サイトカインという物質を誘発します。そして抗炎症性サイトカインの働きにより、関節軟骨の破壊を抑制し、修復・再生を促すのです。(UC-Ⅱの独自作用参照)

病気にも注意が必要です

加齢とともに、犬・猫の関節機能の低下を招くもう1つの要因が「関節の病気」です。

犬や猫も私たちと同じように、さまざまな関節の病気に悩まされています。その代表的なものをいくつかみていきましょう。

●変形性関節症
犬や猫の関節疾患の中でも最も一般的な病気です。

変形性関節症とは、関節軟骨のすり減りによって骨同士がぶつかり、関節が変形してしまう病気で、多くの場合関節の炎症をともない、腫れや痛みが生じます。おもに加齢が原因ですが、脱臼などのほかの病気の影響で発生することもあります。犬や猫では、手根関節や足根関節で加齢性の変化が生じやすく、病気が誘発するものとしては、肘関節、膝関節、股関節で発生が多いといわれています。

変形性関節症は犬によくみられ、全犬の約20%はこの変形性関節症を持っているともいわれています。とくに体重の重い、ゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーといった大型犬のみでなく、ポメラニアン、コーギー、シェットランドシープドッグなどでも発生が多い傾向があります。また、最近の研究1)では、犬よりも猫のほうが変形性関節症を患っている割合が高いことが指摘されています。

●股関節形成不全
股関節形成不全とは、発育過程で骨が変形し、骨盤と大腿骨をつなぐ股関節がかみ合わなくなる病気です。股関節形成不全になるとスムーズに歩くことができなくなり、炎症や脱臼の原因にもなり、やがて変形性関節症へと移行していきます。この病気は、遺伝的な要因で発生するといわれていますが、体重過多、生活環境、運動様式なども発症の引き金となります。

股関節形成不全は、大型犬によくみられる病気で、生後4カ月〜1年の間に症状が発現します。その後、いったん症状は落ち着きますが、変形性関節症が進行するとともに症状が再度発現します。また、稀に猫も発症することがあります。

●関節リウマチ
関節リウマチは、「免疫介在性多発性関節炎」の1つに分類される、免疫異常によって起こる病気です。体の中にある免疫細胞の働きによって、関節に炎症や痛みが生じ、関節を破壊していきます。発症のメカニズムはまだ解明されておらず、原因もわかっていません。

犬にも猫にも発生しますが、犬の場合ミニチュアダックスフンド、プードル、シーズー、コーギーなどによくみられます。
どれも犬・猫の「健康な関節」を脅かす怖い病気です。普段から動物病院で定期的な健康診断を受けることが大切です。そして、ペットに気になる症状があるときはできるだけ早く専門の獣医に診てもらうようにしましょう。

【記事監修】日本大学 生物資源科学部 獣医学科 准教授 枝村一弥 先生


文献

1) 
J Anim Physiol Anim Nutr (Berl). 2012 Oct;96 (5):770-7. doi: 10.1111/j.1439-0396.2011.01166.x. Epub 2011 May 30.